世界のおよそ数百万人の仏教徒と同様、ベトナムの仏教徒は昔から仏教に恭しい心を示している。ベトナムを訪れると、一般市民の日常生活の中における仏教の色彩を容易に見かけることができるだろう。
ベトナム農村部で建てられた寺院は、いずれも荘重でありながら簡素な建築様式を有している。村の寺院は旧暦の1日と満月の日だけでなく、誰もがいかなる時でも参拝できる場所である。村人が村の寺院に供養するものは、自分の田畑で取れたばかりのバナナやビンロウ樹の実、あるいはおこわや餅などである。
 写真:ヴィエット・タイン(Viet Thanh)
ベトナムの様々な宗教儀式の中で、放生は仏教徒がつねに行っている習慣の一つ。捕らえられた魚鳥に法を修して、山野、池水に放つ慈悲行というこの放生は、元々、仏教から生まれた習慣である。ベトナム人にとって、旧正月、潅仏会など仏教の重要な行事に放生するのは、まさに慈悲の心を示すもの。そして、ベトナム人の美意識の一つである。
 写真:チュオン・チン(Trong Chinh)
放生という習慣の他、ベトナムの仏教徒は旧暦の7月15日に、盂蘭盆会を行う。その際、仁愛の心を示すため、先祖だけでなく身寄りのない人々の霊をも供養する。
 写真:チュオン・チン(Trong
Chinh)
仏教が普及している他の国々と同様、昔からベトナムの仏教徒の人口は多かった。ベトナム人は仏教の慈悲、寛容さを好み、自らの理想に従って仏教を求めたのである。潅仏会で線香を上げ、遠い所に目を向けている老いた仏教徒の姿は、仏教に対する今日のベトナム人の心情を示すものである。
 写真:チュオン・チン(Trong Chinh)
ベトナム仏教徒の代表的な宗教活動の一つは、毎月、旧暦1日と15日に寺院に参り、経を唱えながら、国家の平和、国民の平穏、家族の幸福を祈願することである。この日、首都ハノイにある大きな寺院で、ベトナム仏教協会の本部が置かれたクアンスー寺には、各地方からの多くの仏教徒が集まり、仏像の前で祈願する。
 写真:ヴィエット・タイン(Viet Thanh)
この世で生きていた時同様、この世を去った時でも仏陀の近くにいることを望んでいる。ベトナムでは子孫が先祖の墓を世話し、命日に先祖を供養する。しかし、身寄りのない人々、あるいは亡くなった人の遺言に従って、生後、遺灰と遺影を寺院に置くことがある。それは、亡くなった人の霊が仏様の近い場所に宿り、あるいは、命日にすべての人々が供養できることから来ているという。
 写真:レー・ミン(Le Minh)
農村部に住む仏教徒は、田舎ならではの簡素な供物を仏様に供養するが、都市部に住む人々もまた、彼(彼女)らなりの仏様に対する自らの心情を示す。この写真にいる仏教徒は、正殿の落成式に供養できるよう伝統工芸村を訪れ、仏像制作をお願いしたという。
 写真:レー・アイン・トゥアン( Le Anh
Tuan)
文: タイン・ホア(Thanh
Hoa) |