 ザウ寺に安置された18の 阿羅漢
 ザウ寺の正殿
 法雲と法雨を祀る殿
 ゴック・ヌー(玉女)像
 ホアフォン塔にある鐘
| ザウ寺は首都ハノイから30km離れた北部バクニン省トゥアンタイン県のタンクオンに位置している。紀元後2世紀から、この地はルイラウ古城の中心であった。そして、ベトナムで最も古い寺院、ベトナム仏教の発祥地として知られてきた。
2000年にもわたる歴史の変遷を経て、現在のザウ寺の景観は昔のそれと大きく変わっている。遠い昔、この寺に入るために参拝者は、巨大な三間社と2つの池に挟まれた広い道を通って行く必要があった。この池には、ホイアン旧市街をはじめ、いくつかの地方で見られる屋根付きの”日本橋”が架かっていたとされる。
ベトナム国内にある多くの寺院と同様、このザウ寺は東南アジアの伝統的な建築様式によって建立された。長方形に置かれた4つの家屋が前庭、上殿など3棟の建物を囲んでいる。現在、後宮は残っていないが、参拝客は左右にある40軒もの小さい家屋の遺跡を見ることができる。そして、寺の境内にはホアフォンと呼ばれる塔がそびえたっている。この塔は、すべて人間の手によって作られた大型のレンガで建てられた。しかし、時間の経過によって塔の上層の6つの階は失われ、現在、下層3階部分しか残っていないが、その荘重な姿は昔のままである。考古学者により発見された最も古い痕跡は、チャン・アイン・トン(Tran Anh Tong)王朝期の1313年に行われた最大規模の復旧事業によるものであるという。
ある伝説によると、12歳の時からマン・ヌオン(Man Nuong)という人物女性がリンクアン寺(現在のバクニン省ティンズー県にある)で修行を始めた。ある日、マン・ヌオンが眠っていた時、インド人のカウ・ダラという僧侶が偶然、彼女の身体を通り抜けた。その後、マン・ヌオンは妊娠し、14ヵ月後、女の子を出産したという。インドへ行く前、カウ・ダラ僧はマン・ヌオンに神の棒を手渡し、「もし旱魃になった時、この棒を大地に差し込むとすべての生霊を救い出すことができる」と告げ、同時にティンドゥック川沿いにある桑の木に女児を預けるため仏陀に祈願した。
カウ・ダラ僧がインドへ帰った後、恐れていた旱魃が3年間続いた。マン・ヌオンは雨を降らせるために、神の棒を土に差し込んだ。すると大雨が降りだした。この雨によって桑の木が倒れ、ルイラウ古城の方向へ流れていったが、マン・ヌオンの呼び声で河岸に寄せられた。やがて彼女はその桑の木を使って、法雲(ファップ・バン)、法雨(ファップ・ブー)、法雷(ファップ・ロイ)、法電(ファップ・ディン)の四法と言われる4つの仏像を作った。桑の木の真ん中を彫った際、職人は石を見つけたため、この石を川に投げ捨てたという。その後、夜になると川が光るようになったが、これはカウ・ダラ僧が桑の木に預けた娘が石に変化したものだった。その石はマン・ヌオンさんの舟に飛び込び、彼女はこの石を崇め、石光(光る石)と呼んだのである。その後、マン・ヌオンは聖母として尊敬され、トー(マンサー)寺で修行を続けた。彼女が作ったとされる四法が、同じ地方の4つの寺院で祀られている。
 ベトナムの最古の寺であり、ベトナム仏教の発祥地であるザウ寺 | ザウ寺の住職であるティック・ダム・トゥイー(Thich Dam Tuy)僧侶によると、 マン・ヌオンにかかわる伝説とともに存在しているザウ寺には、ジェンウン寺、 ファップバン寺、ティンディン寺、コーチャウ寺など様々な名前が付けられ、京北(キンバック)文化の研究に重要な意義を持つものと評価されている。ここは、インドから伝わった仏教と中国から伝わった仏教の交差点であり、僧侶500名が育てられると同時に、15部の仏教経典が翻訳、され、約10の宝塔が建設された。そして、マウ・バット(Mau Bat)、ティ・ニ・ダ・リュー・チ(Ti Ni Da Luu Chi)、カン・タン・ホイ(Khang Tang Hoi)、ファップ・ヒェン(Phap Hien)など多くの有名な高僧がこの寺で住職を務めた。
ザウ寺に安置された仏像群は、参拝者に深い印象を残している。特に、正殿に置かれたゴック・ヌー(玉女)という仏像は、地元のクアンホ地区の女性たちの姿を連想させるものだ。これらは、トータンと呼ばれるベトナムの伝統的な衣装を身に纏っている優雅な娘たちである。ザウ寺への参詣は、人々にベトナムの様々な文化的価値を理解させることにも役立っている。この寺の周囲には、ティンドク川沿いに建てられたルイラウ古城、千手千足観音が安置されたブットタップ寺、ドンホー絵画の村などがある。現在、ベトナム政府はザウ寺を「ベトナム仏教の聖地」という名にふさわしいものとするため、改修工事を行っている。
文:チャン・チー・コン( Tran Chi
Cong) 写真:ティエン・ズン( Tien
Dung)、コン・ホアン(Cong
Hoan) |