新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の治療法開発に役立つ可能性のある研究成果だということです。
4日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ（Nature Communications）に掲載された論文によりますと、新型コロナウイルスを中和したこの抗体は「COVID-19の予防や治療に向けた可能性をもたらす」ということです。動物実験や臨床試験はまだ実施されていません。
オランダのユトレヒト大学（Utrecht University）とエラスムス医学センター（EMC）の研究チームは、コロナウイルスが細胞に侵入するために用いるスパイクタンパク質を精製したものを、「ヒト化マウス」の細胞に注入しました。実験では、重症急性呼吸器症候群（SARS）や中東呼吸器症候群（MERS）を引き起こすコロナウイルスを含むさまざまな種類のコロナウイルスのスパイクタンパク質を使用しました。
予防接種に似たこの処置により、ヒト化マウス細胞は複数の中和抗体を生成しました。研究チームはこれらの抗体を精製し、COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2と、SARSを引き起こすSARS-CoVの2種類のコロナウイルスに対して試験しました。その結果、抗体の一つですが、両方の病原ウイルスの細胞への侵入を阻害するのを確認しました。
今回得られた結果について、研究に参加していない専門家らは、新たに発見された抗体が治療法として機能するかどうかが分かるのはまだ先のことだとコメントしています。
英ウォーリック大医学部（Warwick Medical School）の名誉講師のジェームス・ギル（James Gill）氏は、「非常に前途有望」な結果としながらも、「実験室のペトリ皿内の細胞群でウイルスを中和する抗体が見つかったというだけでは、患者でも同じ反応が期待できるわけではない」と指摘し、注意を促しました。
