国際通貨基金(IMF)は14日、最新の世界経済見通しを公表し、関税の影響や金融環境が当初の想定より穏やかだったことから、2025年の世界のGDP(国内総生産)成長率予想を上方修正したと明らかにしました。一方で、米中貿易摩擦が再燃した場合、成長が大幅に減速する恐れがあると警告しました。
IMFは今年の世界のGDP成長率を3.2%と予測し、7月時点の3.0%から引き上げました。トランプ氏が「相互関税」を課す意向を示した4月時点の予想は2.8%でした。2026年の成長率予想は3.1%で据え置きました。
IMFは、アメリカと主要国との間で結ばれた貿易合意により報復関税の応酬が避けられ、最悪のシナリオが回避されたことが上方修正につながったと指摘しました。
IMFのチーフエコノミスト、グランシャ氏は、予想より低い関税率、輸入の前倒しとサプライチェーンの迅速な迂回、ドル安、欧州と中国の財政刺激、AI(人工知能)投資ブームが世界の成長を下支えしていると分析しました。同氏は今週開幕するIMF・世界銀行年次総会を前に「懸念していたほど悪くはないものの、1年前の想定には及ばず、必要とされる水準にも達していない」と述べました。
トランプ氏は10日、中国がレアアース(希土類)の輸出規制を強化したことへの対抗措置として、中国製品に100%の追加関税を課すと発表しました。
グランシャ氏はロイターのインタビューで「これが現実になれば、当然世界経済にとって重大なリスクとなる」と指摘し、事態が悪化すれば不確実性が高まり、投資や消費が冷え込み、成長見通しが大きく下振れする可能性があるとの見方を示しました。
IMFは下振れリスクのシナリオとして、中国製品に現行より30%ポイント、日本、ユーロ圏、アジア新興国に10ポイント高い関税が課された場合の影響を分析しました。
その結果、世界の成長率は2026年に0.3ポイント押し下げられ、2028年まで0.6ポイント以上の下押しが続くと予測しました。さらにインフレ期待と金利の上昇、アメリカ国資産への需要低下などを考慮すると、GDPの押し下げ幅は2026年に1.2ポイント、2027年には1.8ポイントへ拡大する可能性があるとしました。(ロイター)
(VOVWORLD)