今回のプロジェクトの対象地域は、かつてのクアンビン省にあたり、戦争終結から50年を迎える2025年に向けて、特別な意義を持つとされています。
7月30日、中部クアンチ省ドンチャイック村において、日本政府による草の根・人間の安全保障無償資金協力「クアンビン省における統合的クラスター弾等除去計画」の一環として、除去作業を終えた約3平方キロメートルの土地の引渡し式が行われました。式典には、在ベトナム日本大使館の伊藤直樹大使と関係者、クアンチ省の指導者、人道的地雷除去を行う国際NGOマインズ・アドバイザリー・グループ(MAG)ベトナム事務所の関係者などが出席しました。
在ベトナム日本大使館の伊藤直樹大使(写真提供:在ベトナム日本大使館)
今回のプロジェクトの対象地域は、かつてのクアンビン省にあたり、戦争終結から50年を迎える2025年に向けて、特別な意義を持つとされています。ベトナム戦争終結から半世紀が経過した現在も、不発弾による被害は続いており、とりわけ旧クアンビン地域では約6000人の死傷者が記録されています。未処理の爆弾や地雷は、人々の安全を脅かすだけでなく、農業やインフラ整備の障害にもなり、地域の発展を阻んでいます。
日本は過去20年以上にわたり、ベトナムの地雷除去活動を継続的に支援してきました。特に旧クアンビン地域では、2015年以降、日本政府からMAGに対して総額約550万米ドルの支援が行われ、26平方キロメートルを超える土地が処理・引き渡され、約13万7000人の生活向上に貢献しています。これにより、地元住民は安心してコメ、トウモロコシ、キャッサバなどの作物を栽培したり、ユーカリの植林や基礎インフラの整備を進めることが可能となっています。
式典で伊藤大使は、安全な土地が住民に返還される瞬間に立ち会えたことへの喜びを語り、日本とベトナムが共に戦争と爆弾・地雷の深刻な被害を経験してきた歴史を振り返りながら、深い共感の意を示しました。また、北中部の新たな成長拠点を目指すクアンチ省において、安全な土地と生活環境の確保が持続可能な発展に不可欠であると強調し、国際社会に対して引き続き地雷除去支援に取り組むよう呼びかけました。
このプロジェクトでは、子どもを含む地元住民への教育活動にも重点を置き、爆発物の危険性についての認識を高め、発見時の適切な対応を促す取り組みも行われています。伊藤大使は、MAGの活動が8月初旬に開催される大阪の展示会で紹介される予定であると述べ、こうした取り組みが国際的な理解と支援の拡大につながることに期待を寄せました。
式典後、伊藤大使は第6次支援事業の一環として除去作業が進められている現場を視察し、過去に爆弾汚染の被害を受けた地域に住む住民との交流を通じて、現地の生活状況にも耳を傾けました。
(VOVWORLD)