新型コロナウイルスの大流行でアフリカなど低所得国の債務負担が重くなり、経済悪化が深刻です。先進国に新興国を加えた20カ国・地域(G20)など主要債権国が低所得国からの債務の返済を一時猶予するほか、日本政府も資金支援に乗り出しました。返済資金を医療体制整備などに充ててもらい、感染拡大を抑えたい考えです。
IMFなどによりますと、今年1月以降に低所得国を含む新興国からは1000億ドル(約10兆7000億円)規模の史上最大の資金流出が発生し、新興国が世界経済の悪化に拍車をかける恐れが出ています。通貨安によって債権国への返済負担が重くなり、自国内の医療体制整備や経済対策が遅れ、特にエチオピアやイエメンなどでは十分な医療が提供できず問題となっています。
G20財務相・中央銀行総裁は4月、2020年に返済期限を迎える低所得国の債務の返済を少なくとも20年末まで猶予することや、IMFや世界銀行グループによる前例のない規模での支援で合意しました。ただ将来の資金調達への妨げになるとして、返済猶予に慎重な低所得国もあります。
IMFには低所得国を中心とする100以上の加盟国から融資の要請があり、支援策を拡充しています。日本政府は債務返済を一部肩代わりするためのIMFの「大災害抑制・救済基金」に1億ドルの拠出を決定するとともに、財政再建策などの条件なしで、長期間、低金利で融資するIMFの「貧困削減・成長基金」の融資枠を最大約5300億円追加します。大和総研の藤岡宏明シニアクレジットアナリストは「先進国で収束しても低所得国からまた感染が広がりかねず、国際協力が必要だ」と支援の意義を強調します。