ベトナム人の製塩業

ベトナム人の製塩業

ベトナムは3,260キロメートルに及ぶ長い海岸線を有し、海に関わる様々な産業がありますが、その一つが塩の生産で、沿岸地域の人々によって受け継がれてきた、最も古く、また最も過酷な仕事です。あらゆる料理に欠かせない豊かな風味を生み出す小さな塩の粒には、ベトナムの塩田労働者たちが代々受け継いできた民間の知恵と文化的な伝統が凝集されています。


ニントゥアン省(現在のカインホア省)のチーハイ塩田。  撮影:チャン・コン・ダット/ベトナムフォトジャーナル
 

ベトナムの塩作りは、単に海水を引き入れて乾燥を待つだけのものではなく、自然への素晴らしい適応と言えるでしょう。地域ごとに地形や土壌、日照量、風の量などが異なるため、人々はそれぞれ独自の生産方式を生み出してきました。

年間を通して強い日差しがそれほと強くない北部や中北部では、ナムディン省、タインホア省、ゲアン省の人々は「砂地干し(天日乾燥法)」という技術を選びました。海水を砂に染み込ませて乾燥させることで、一粒一粒の小さな砂の周りに塩が付着し、それをろ過して最も濃縮された塩水を取り出し、土の区画(塩田)で干します。こうしてできた砂地干しの塩は、きめが細かく、まろやかでピリッと風味があり、これこそが、あの有名な香り高い魚醤を造るために欠かせない「黄金」の原料となるのです。


シートを敷いた塩田で塩をかき集める労働者たち。  撮影:タット・ソン/ベトナムフォトジャーナル
カインホア省ホンコイ塩田を照らし出す黄金色の朝焼け。  撮影:タット・ソン/ベトナムフォトジャーナル
カインホア省ホンコイ産の塩製品は日本への輸出基準を満たす。  撮影:タット・ソン/ベトナムフォトジャーナル

一方、一年中太陽が照りつけ、強い海風が吹き抜ける中南部や南部地域に目を向けると、カナ、ホンコイ(カインホア省)、サフイン(クアンガイ省)といった主要な塩の産地では独自の「天日結晶法(水干し)」といった方法が開発されてきました。海水はいくつもの段階に分かれた塩田を流れながら、強烈な日差しを浴びて徐々に濃縮され、最終的に大粒で真っ白な結晶となり、豊かな海の風味を帯びます。 

塩作りほど、天候の過酷さがそのまま人々の喜びが密接に結びついた仕事は少ないでしょう。一般の農家にとって照りつける猛暑は恐怖ですが、塩田で働く人々にとっては、肌を焦がすような強烈な日差しほど塩を素早く結晶化させ、最高の品質へと仕上げてくれるのです。

夕暮れ時、ニンビン省ハイリー塩田で塩を急いでかき集める塩民たち。  撮影:チャン・タイン・ザン/ベトナムフォトジャーナル
 

塩田で働く人々の仕事は通常、夜が明ける前から始まり、塩田の気温が40〜45度に達する正午過ぎまで続きます。頭上から容赦なく照りつける太陽と、真っ白な塩田に反射した光が彼らの顔に当たり、人々の肌を黒く染めます。日中に突然の豪雨が一度でも降り注げば、一日中背中を丸めて積み上げてきた苦労が、一瞬にして水の泡となってしまうのです。

これほど過酷な仕事でありながら、サフイン(クアンガイ省)、トゥイハイ(タイビン省)、バクリーウなど、全国各地の製塩業が国家無形文化遺産に認定されていることは、大きな誇りでもあります。塩は、ナムオーやフーコック、ファンティエットの有名な魚醤の魂であり、「年初に塩を買う」というベトナムの風習は、情愛の深さや忠実さの象徴でもあるのです。


塩田の水面に映し出される労働者たちの素朴な姿。  撮影:チャン・タイン・ザン/ベトナムフォトジャーナル
 ニンビン省ハイリー塩田における塩の収穫の様子。  撮影:チャン・タイン・ザン/ベトナムフォトジャーナル
 

伝統的な製塩業は不可欠な文化的また経済的な価値を持つにもかかわらず、多くの課題に直面しています。塩の価格の不安定さや人件費の高騰により、多くの地域で塩田の面積が徐々に縮小しています。このような衰退の危機を前に、多くの伝統的な塩の里が新たな活路を見出そうとしています。例えば、生産性を向上させるためにゴムシートを用いた乾燥技術を導入したり、高品質の塩(塩の花、薬用塩)の加工に注力したり、体験型観光と組み合わせたりする取り組みが進められています。

今やサフインやホンコイの塩田は、市場に産物を供給するだけでなく、国内外からの観光客や写真家たちを魅惑するスポットとなっています。ささやかな夕食であっても、一粒の塩がたどった旅路を知れば、故郷の味わいを豊かにするために昼夜を問わず流される、あの寡黙な汗の結晶に、より一層の感謝の念を抱かずにはいられません。 


文:チャン・タイン・ザン

撮影:タット・ソン、タイン・ザン、コン・ダット/ベトナムフォトジャーナル



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