社会で恵まれない人々を支援する使命を持つクアット・トゥ・ホン博士
クワット・トゥ・ホン博士が所長を務める社会開発研究所(ISDS)は立法機関が政策を策定および改正する際に参照する独立した研究調査と、ジェンダー平等と恵まれないグループの社会的包摂を促進する活動を導くためのツールキットの作成を行い、「ベトナムをあらゆる声が伝わり、社会正義が貫かれ、多様性が促進され、すべての人に平等が与えられる豊かな国にする」ことに貢献するという使命を果たしています。
2002年の設立以来、ISDS は社会で恵まれないグループについて多くの研究を実施してきました。その際、ISDS およびその他の研究機関は様々な社会集団の脆弱性に注意を払い、包括性を確保し、証拠に基づいた社会政策の改善と策定においてベトナム政府を支援してきました。ISDS は科学的な目的で社会調査を行うだけでなく、地域開発や社会意識の向上という目的に向けて調査結果を積極的に活用しています。
2006年にHIV/エイズ予防管理法が公布され、HIV 感染者は平等に扱われるべきであると初めて確認され、偏見や差別が禁止されました。それだけでなく、ベトナム政府はHIV感染者を支援するための政策を改正し続けています。2017年の改正健康保険法により、健康保険に加入しているHIV感染者は抗レトロウイルス薬治療や日和見感染症の治療など、重要な医療サービスをすべて無料で受けられることになりました。
もう一つの弱い立場にあるグループである障害者のための法的および政策の枠組みも、徐々に変化してきました。2010年障害者法では障害者に対する偏見や差別も禁止されており、障害者が社会のために仕事に参加し、専念し、貢献するための平等な条件を作り出す多くの法規制が定めらました。
これらは恵まれないグループだけでなく、ホン博士やISDSの同僚のような研究者やソーシャルワーカーにとっても良い兆候です。ホン博士は「ISDSの研究結果が法律制定の過程で参照されると、私や私の同僚にとってさらに楽しく、やる気が湧きます」と述べました。
ホン博士と彼の同僚は、態度と行動の変化を導くための一連のツールキットを開発しました。ISDS ツールキットは、不利な立場にあるグループに対する人々の意識を高めるための教育とコミュニケーションを目的として、党機関、政府、社会団体によって広く使用されています。
具体的には、2004 年にHIVと共に生きる人々に対する偏見と差別の現状を調査した後、ISDS は「HIV/AIDS を理解し、軽減するための活動を導くためのツールキット」を開発しました。
その後数年間、実践的な研究からISDSは認識の変化をサポートし、注射薬物使用者、売春する人々、LGBT共同体などの他の恵まれないグループに対する偏見を軽減するためのツールキットを作成し、その後、障害のある人々についての認識を変えるためのツールキットを作成しました。これらは、恵まれない人々の共同体の考え方や行動に具体的な変化をもたらし、意識の中だけの善意の願いから実際の前向きな行動へと移行するための、真に有用なツールです。ホン博士と彼の同僚のISDSにおける活動は、恵まれない人々にベトナム社会での前向きな変化をもたらしました。
ホン博士は「HIVと共に生きる人々を差別する場合、彼らは秘密裏に多くの行動をとらなければなりません。そのため、安全対策が十分に実施されていない可能性があります。LGBTの共同体の人々も同様で、社会が彼らを差別すると、彼らは学習や労働の機会に平等にアクセスできなくなり、常に罪悪感を抱えて生き、努力することを望まなくなります。目に見えないところで、社会は彼らの才能や貢献を活用していません」と強調しました。
ホン博士によれば現実には社会には常にさまざまなグループが存在します。そして、良い社会とは、常にすべてのグループの公平性と平等を確保するよう努めるものです。そして社会に不平等が存在する限り、その社会は文明化されたとも発展したとも言えません。
さらに見てみると、恵まれないグループの物語は社会のすべての個人の物語です。このグループに対する人々の態度や行動は社会の礼儀正しさを雄弁に物語ります。すべての人は自分の子供たちが平等に扱われ、理解され、共感され、助けられ、愛される文明的で進歩的な社会で暮らしてほしいと願っています。それを望むなら、今こそ、一人ひとりがより積極的かつ力強く行動し、政府に加わり「ベトナムは誰一人取り残さない」という公約の実現のために努力を捧げる必要があります。
文:タオ・ヴィ
撮影:カイン・ロンと資料
訳者:ソン・タム・クエン