ベトナム東部海域における航行の自由

ベトナム東部海域における航行の自由

 

ベトナム東部海域はASEAN諸国の戦略地域および生存(発展と安全保障)のための空間だけでなく、経済的にも重要な位置を占め、アジア-太平洋地域、そして世界の「血脈」と呼ぶべき輸送路です。

まず、ベトナム東部海域は太平洋-インド洋、欧州-アジア、中東-アジアを結ぶ重要な海上ルート上に位置するため、世界の海洋貿易において極めて重要な役割を果たしています。

ベトナム東部海域を通る海上ルートはアジアの多くの国にとって物品交換の「喉」であり、貿易額は約5兆3千億ドルに上ります。米国エネルギー庁の統計によると、原油の3分の1と液化石油ガスの半分以上が南シナ海を通って輸送されています。この海を通って輸送される原油や液化石油ガスの量は、中米のパナマ運河を通って輸送される量の15倍にもなります。毎年、輸入石油量の約70%、日本の輸出量の約45% が東部海域を経由して輸送されています。中国には29/39の海路があり、輸出入商品の約60%、輸入石油の70% が東部海域を経由して海上輸送されています。


首相が承認した2050年までのビジョンを見据えた
2021年から2030年までのベトナムの港湾システム開発マスタープランによると、
バリア・ブンタウ海港は特別海港として分類され、ベトナム最大のゲートウェイ港および国際積み替え港。
撮影:ベトナム通信社

バリア・ブンタウ省フー・ミー町の
ゲマリンク深水港にある世界で最も近代的なクレーン。
撮影:ベトナム通信社

ベトナム、タイ、フィリピン、マレーシア、カンボジア、シンガポール、インドネシア、ブルネイは東部海域に国境を接するASEAN諸国です。ベトナム東部海域を通じた東南アジア諸国の輸出量は55%、新興工業国が26%、オーストラリアが40%となっています。 

ベトナムにとって輸出入品は100%東部海域を経由しなければなりません。ベトナムは、海上貿易を目的とした同期港湾システムを計画しているこの地域の先駆国です。ベトナム海事局によると、現在ベトナムには272の港があり、埠頭の総延長は92,2kmに達し、総輸送量は年間5億5千万トンを超えています。港湾システムは国の中心部および主要な経済地域と密接に関連しています。 

 

インドネシアのルトノ・マルスディ外相は第11回拡大ASEAN海事フォーラム(EAMF)で、海洋法(UNCLOS)に基づいて、インド太平洋の平和、安全、安定を維持するためにベトナム東部海域における航行の自由の重要性を認識し、各国に対し海洋協力を強化し、1982年国連条約を含む国際法を遵守するよう呼び掛けました。

 

海上警備の強化

一方、インド洋ー太平洋に関するASEANビジョン(AOIP)声明でも、海洋分野での「協力の習慣」の構築が強調されました。このビジョンを具体化するために、2022年にインドネシアで開催された第1回東南アジア諸国連合沿岸警備フォーラムはASEAN沿岸警備隊宣言の署名に成功しました。

地域諸国だけでなく、世界の主要経済国も東部海域における航行の自由の問題に大きな懸念を抱いています。学者の寺島宏氏(元海洋政策研究所所長)は、ベトナム東部海域問題を解釈するための関係者と学者との対話と相互連絡、法秩序の共有、海上紛争解決の基礎基盤の構築、海上の安全維持などの東部海域問題に取り組む戦略を導入し、ASEAN諸国、特に東部海域沿岸諸国が1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)を履行し、海洋の安全を確保できるよう支援しました。

ハイ・フォン市のラン・ハ湾、カット・バ諸島の海域で
捜索、救助、救出に対処するための訓練を行うベトナム当局。
撮影:ベトナム通信社

日本と同様にインドも東部海域はアジアだけでなく世界の経済と安全保障にとって非常に重要であることを確認しました。インド国防研究分析研究所のジャガンナート・パンダ教授も経済や国家間の関係を深めている航行の自由を強調し、地域諸国間の海洋条約に関する解決策を提案しました。

ノッティンガム大学(英国)のグレゴリー・ムーア教授はベトナム通信社の記者とのインタビューで、ベトナム東部海域の主権を主張する国々は問題を解決するために協力し、対話する必要があると断言しました。


文:ベトナムフォトジャーナル

撮影:ベトナム通信社
訳者:ソン・タム・クエン

 


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