チャム文化遺産の輝かしい宝庫

チャム文化遺産の輝かしい宝庫



ポー・クロン・ガライの塔群 (ニン・トゥアン省) は
チャム族の多くの特別な陶器のモチーフで装飾された国家建築芸術記念碑。
撮影:グエン・ルアン/ベトナムフォトジャーナル


チャム文化は多くの祭り、遺跡、伝統工芸品において大いなる輝きを放っています。この中にユネスコが緊急保護の必要な無形文化遺産として登録している「チャム陶器芸術」があり、ベトナム54民族からなる大家族の色彩豊かな文化像の創造に貢献しています。     

チャム族の有名な祭り


チャム族は年間を通して、ラムワン祭り、カテ祭り、雨乞いの儀式、ロヤ・ピク・トロク祭り、ポーナガルバ塔祭り、塔の開門式など、数多くの伝統的な祭りが行われます。中でもラムワン祭りとカテ祭りはチャム族の二大文化行事とされています。 

ラムワン祭りは一年で最も重要な行事であり、各家族が集まり、先祖や祖父母を偲び、村の平和、家の繁栄、豊作を祈ります。この時には、どんなに遠くにいるチャム族の人々も祖先を崇拝し、親戚や家族と集まるために戻ってこようとします。


ラムワン祭りは通常、陰暦の3月または4月に開催され、1か月間続きます。ラムワン祭りでは墓掃除の儀式が最も重要な儀式となります。この日、バニ教を信仰するチャム族は伝統衣装を着て洞窟(チャム墓地)に集まり、一緒に墓掃除の儀式を行い、先祖や祖父母を崇拝します。チャム族の墓はしっかりと建てられておらず、地面が砂で覆われ、丸い石でマークされているだけという特徴もあります。墓は非常に独特で長い列に配置されています。

ラムワン祭りの他にカテ祭りも一年の大きな祭りです。バラモン教に従うチャム族の祭りで、チャム暦の7月の初め(新暦の10月から)に行われます。祭りは古代チャムの塔で開催されます。



 

ニン・トゥアン省に次いでベトナムで二番目に大きなチャム族共同体があるビン・トゥアンでは、ポー・サ・イヌ塔遺跡(ファン・ティエット市フー・ハイ区)が常に主要な場所として選ばれ、多くの人のためにカテ祭りを開催します。これはチャム族の文化的、建築的、宗教的場所であると同時に観光名所でもあり、多くの観光客を惹きつけてます。

祭り当日にはポー・サ・イヌ塔では塔の開門式、天候や雨風、豊かな実りをもたらしてくれた神に感謝するという神聖な意味を持つ盛大な礼拝式、また殉教者、祖父母、先祖を追悼するためにもユニークで特徴的な儀式が数多く執り行われます。上記の意味に加えて、この機会にチャム族の共同体もポー・サ・イヌの塔に行き、健康と平和、先祖から家族への祝福、子や孫の商売繁盛と幸運を祈ります。

 
ビン・トゥアン省のバラモン教に
則ったケート祭りで行われる伝統的なチャム族のダンス。
撮影:ヒュウ・タイン

カテ祭りではチャム族の人々が伝統楽器を演奏したり、踊ったり、チャム民謡を歌ったりします。各活動は非常に刺激的で、観客を魅了します。陶器作りの実演や錦織の実演、地元の特産品の展示など、チャム文化を紹介する活動も数多くあります。これらすべてがチャムの文化的活動に富んだ色鮮やかなカテ祭りを生み出します。

カテ祭りはチャム族の宗教的ニーズを満たすだけでなく、長い間、チャム文化の美しさを探求する国内外の多くの観光客を魅了するユニークな文化的および観光イベントとなってきました。

 

独特な芸術 チャム族の陶器作り


チャム族の陶器作りがいつ始まったのかを正確に知る人は誰もいません。分かっているのは、それが長い間存在していたということだけです。今日、チャム陶器の職業は依然として存在し、ビン・トゥアン省バク・ビン県ファン・ヒエップ町のビン・ドゥック陶器村(以前はリゴック村として知られていた)とニン・トゥアン省ニン・フック県フォック・ザン町にあるバウ・チュック陶器村(以前はハム・クロック村と呼ばれていた)の2か所で非常に大きな発展を遂げています。中でもニン・トゥアン省のバウ・チュック陶器村は12世紀後半から現在に至るまで存在し、千年ほど前から初歩的な手作業による生産方法が今も完全に残っている東南アジア最古の陶器村の一つと言われています。

独特な製品を生み出すバウ・チュック陶器村の職人たち。
撮影:コン・ダット

2022年11月29日、「チャム族の陶芸」が、国連科学教育文化機関 (ユネスコ) によって緊急保護が必要な無形文化遺産のリストに登録されました。これは、ユネスコの遺産リストに登録されているベトナムの15番目の無形文化遺産です。

バウ・チュックの作陶技術の特徴は、他の作陶地域のように轆轤を使わず、粘土ブロックを一定の場所に置き、職人が粘土をくるりと回しながら器用に手作業で成形することです。バウ・チュック陶器は成型せずに、すべて手作業で作るため、製品はユニークなものが多く、同じものは二つとありません。


 

バウ・チュック陶器の模様は、主に川、木、空と大地、宗教的な内容をテーマにしています。バウ・チュックの陶磁器の焼き方も非常に独特で、炉で焼くのではなく、屋外に積み上げ、木、藁、籾殻などを入れ、温度約800度でサイズの商品により5~8時間焼きます。

昔からの伝統によれば、家の主人は陶器を焼成する前に、先祖や神々を崇拝するための吉日を選び、いくつかの供物を購入し、焼成した陶器製品が傷や損傷なく均一に「焼き上がる」ように祈ります。 

バウ・チュック陶器の伝統的な製品には、通常、壺、壷、かまど、やかん、鍋など、様々な種類があります。市場経済時代の今日、バウ・チュック陶器村の職人たちは、観光や商業に役立つ芸術性の高い多くの新しいデザインを素早く研究し、創作してきました。

 

バウ・チュックの手作り陶器製品を開発するための長期的かつ持続可能な方向性について、バウ・チュック・チャム陶器協同組合のフー・ヒュウ・ミン・トゥアン会長は「私たちは常に研究して新しいアイデアを考え出し、市場の好みに合わせてデザインを変更および改善し続けています。現在、主要な約500種類を含む1万種類以上の製品を取り揃えております。当社は人材、特に若い人材への投資にも非常に関心を持っています。同時に、観光と組み合わせて地元の可能性を最大限に引き出す工芸村を開発する計画もあります」と語っていました。

 

ユネスコによる緊急保護が必要な無形文化遺産リスト「チャム陶器の芸術」の登録は、世界の文化遺産の宝庫というべきベトナムの国家文化的アイデンティティーを確認できます。チャム族の陶器作りの文化的、芸術的遺産は今や人類の共有財産となっています。

ユネスコにより緊急保護が必要な無形文化遺産リストに
「チャム陶器作りの芸術」が登録された認定式典における特別芸術プログラム。
撮影:レー・ミン/ベトナムフォトジャーナル


2019年の人口と家庭調査データによると、ベトナムのチャム族の人口は17万8948人で、主にニン・トゥアン省、ビン・トゥアン省、ドン・ナイ省、アン・ザン省などの中南部と南部の省に集中している。このうちチャム族は主にニン・トゥアン省とビン・トゥアン省の二つの省に住んでいる。2022年、ビン・トゥアン省のチャム族のカテ祭りが国家無形文化遺産に認定された。


文:ソン・ギア

撮影:レー・ミン、コン・ダット

デザイン:チョン・ハイン

訳者:ソン・タム・クエン


 


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