写真家ニック・ウット 写真の作者は時と共に永遠に生きる

写真家ニック・ウット 写真の作者は時と共に永遠に生きる

50年以上が経過しましたが、ニックット(フイン・コン・ウット)の名前は世界中の多くの国で多くの記事、セミナー、講演、写真展に定期的に登場しています。彼は「戦争の恐怖」或いはより有名な「ナパーム弾の少女」というタイトルで世界に衝撃を与えたモノクロ写真で、ベトナム人として初めて、且つ史上最年少でピューリツァー賞を受賞したことでも知られています。しかし、誰もが彼のことを知っているわけではなく、非常に素朴な写真家であり、親しみやすく、話すときは機知に富んでいますが、仕事においては写真への愛情と情熱に溢れ、その情熱とダイナミックで意欲的に身を投じる精神があるからこそ、すべての報道写真家がなせるわけではない歴史的瞬間を記録することができました。

AP通信社の元トップ報道写真家に会って、50年前に世界に衝撃を与えた歴史的な写真やフォトジャーナリズム、また現在の仕事についての話しを聞くことは私にとって素晴らしい機会となりました。

私たちの物語は、彼が写真に魅了され、後にAP通信社のフォトジャーナリストになったことから始まります。彼は子供の頃からAPの戦争特派員である兄のフイン・タイン・ミーを常に憧れてきました。兄のタイン・ミーは写真の基本的な知識を彼に教えた最初の教師であり、古いカメラを兄から借りて初めてフレームを撮影する練習をしました。彼はまた、兄から戦争の残忍さとベトナムの人々が耐えなければならなかった痛みについて聞かされました。そのため、ニック・ウット氏は戦争によって引き起こされた損失を十分に認識しており、後に兄のタン・ミーが出張中に殺害された時、彼と彼の家族も戦争の犠牲者になりました。

時間とともに永遠に生き続けるニック・ウットの写真「ナパーム弾の少女」。

昔の写真「ナパーム弾の少女」に写った人物‐ファン・ティー・キム・クック(Phan Thi Kim Cuc)さんと再会する写真家ニック・ウット。

16歳でAPに勤務し、洗濯と撮影のための暗室で2年間働いた後、ニック・ウット氏が初めてカメラを持つことを許された時、泣いている仏教徒に囲まれ一人の修道女が戦争抗議のために焼身自殺をしている写真を撮りました。この写真はニック・ウットという作者名と共にAPの一面に掲載され、このことが原動力となり、従軍記者志望に拍車がかかりました。

彼はキャリアの中で戦争、有名なハリウッドのアーティスト、そして人生のあらゆる分野の写真を何千枚も撮ってきましたが、1971年に撮影した「ナパーム弾の少女 」は最も優れた写真です。この写真では、9歳のファン ・ティ・ キム・ フックさんがナパーム弾で火傷を負ってパニックに陥り、服を着ずに走っている様子を撮影した他、タイ ・ニン省チャン ・バン地域においてアメリカのナパーム弾で火傷を負った子供たちを撮影しました。人々に感動を与えるこの写真によってニック・ウット氏はピューリッツァー賞を受賞しました。 ニック・ウット氏は20世紀で最初のベトナム人受賞者となり、21歳という最年少でジャーナリズムで最も権威のある賞の一つを受賞しました。ピューリッツァー賞に加えて、この写真は数え切れないほどの国際的な賞を受賞しており、20世紀で最も影響力のある100枚の写真の41位にランクされ、50年間の最も記憶に残る10の新聞写真の一つにランクされています。

 

ニック・ウット写真家による作品。

ウット氏はそれ以降も自身の仕事中には「地獄からハリウッドまで」いつもカメラを持ち、セミナーによく行ってエリザベス女王、ローマ法王、トランプ大統領などの世界のトップリーダーたち、またキャロル・グジー、ジェームス・ナクトウェイのような世界のトップ写真家、有名なハリウッドの役者、またアメリカやベトナムの退役軍人、さらには一般の人々と会って話をし、これらの写真に対して多くの評価と感謝を受けたそうです。

ニック・ウット氏は2021年にホワイトハウスでトランプ大統領から国家芸術勲章を授与された時の忘れられない思い出を語りました。ドナルド・トランプ大統領は式典ですべての出席者に写真「ベイビー・ナパーム」を知っているかどうか尋ねました。皆、手を挙げました。トランプ大統領はウット氏の写真が戦争を変え、世界に平和をもたらしたと断言しました。

ベトナムでの撮影旅行中の写真家ニック・ウット。


「私は何十年も前からニック・ウット氏と知り合いで、彼とは何度も写真を撮りに行きました。彼は私にとってはとても素朴で、謙虚で、親しみやすい人ですが非常に有名な人物です。そのため、彼はどこに行っても愛され、尊敬されています。ニック・ウット氏は写真に情熱を傾けており、仕事のために生きています。72歳で、ニック・ウット氏のように重いレンズを付けたカメラを持って、人生の瞬間を捉えようと歩き回っているアーティストはめったにいません」

有名な写真家 チャン・テー・フォン

また、この写真は世界のトップ写真家にも大きな影響を与えています。彼はアメリカに仕事に行った時、ピューリッツァー賞を四回受賞した有名なワシントン・ポストの女性報道写真家キャロル・グジー、また世界のトップ写真家ジェームス・ナクトウェイが戦争写真家になるきっかけとなっのは「ナパーム弾の少女」の写真だったと話していたと教えてくれました。ピューリッツァー賞を二回受賞した伝説的なAP報道写真家ホルスト・ファースは写真「ナパーム弾の少女」は永遠に忘れられないそうです。

ニック・ウットにとって、これは高貴なご褒美であり、素朴な幸福であり、人生のあらゆる分野で献身を続け、多くの歴史的瞬間を捉えるためのモチベーションの源です。

 

ベトナムで撮影された写真家のニック・ウット(Nick Ut)の作品。

彼は続けて、素晴らしい思い出、記憶に残る出来事、幸運にも記録できた神によって手配されたと思われる瞬間について、そして彼のキャリアを通じて積み上げてきた経験について情熱的に話してくれました。

自身のジャーナリズムの経験をベトナムフォトジャーナルの記者や編集者に語る写真家のニック・ウット。

彼によると、貴重な報道写真を得るためには報道写真家は勇敢で、動き回り、現場ではダイナミックで意欲的でなければなりません。どんな事があろうとも、人物の悲しみや幸せな感情を捉えることができるように人物を観察し、貴重な瞬間を見逃さないように常に準備を整えていることが重要です。特に、報道写真家は創造し、探求し、通常のフレームとは異なる新しい視点を見つける必要があります。

ニック・ウット氏は誰もが知っている伝説の写真家です。彼は愛、写真への情熱、職場でのプロフェッショナリズム、そして素朴で親しみやすい性格を持ち、何世代にもわたる記者が学ぶべき模範です。数日間、私は彼と一緒に歩き回って写真を撮る機会がありました。私は彼の仕事への愛と魂を感じました。彼は常に目立たず、静かに群衆に溶け込み、あらゆる撮影の瞬間を楽しんで、人生を真に反映するフレームが得られるのを辛抱強く待っていました。彼によると、フォトジャーナリズムは本物でなければなりません。そのような写真には記録的な価値があり、時とともに永遠に生き続けます。この旅行中にニック・ウット氏がハノイや他の多くの場所で撮影した今日の写真は、わずか数年後にベトナムの人々に関する貴重な文書となります。すべては過ぎ去り、レンズに記録されたものだけが永遠に残ります」

ジャーナリストのファム・ティエン・ズン

VNA写真編集の元責任者

元写真誌編集長

現在、彼は引退しましたが、このアーティストは自身のプロジェクトや計画を実行し続けます。ニック・ウット氏はベトナム、特に特別な愛情を抱いているハノイに何度か戻り、ここの生活と人々の美しさを記録に残す予定です。彼のカメラを通して、ある瞬間が歴史になる可能性があります。

時とともに永遠に生き続けた写真「ナパーム弾の少女」について語る写真家のニック・ウット。写真: テー・フォン

 文:ダン・フエン、写真:テー・フォン、VNP


Top