５月８日午後１時９分（現地時間）、モンゴルの首都ウランバートルで、ベトナムの文書「フエ王宮にある九鼎の鋳物」が承認され、正式にユネスコのアジア太平洋記憶遺産の資料遺産となりました。

これを通じて、１９世紀前半のベトナムの青銅器「百科事典」が特別でユニークな価値を持つことがわかります。この認定により、現在までフエには８件の遺産がユネスコによって登録されています。これはトゥアティエンフエ省にとっての喜びであるだけでなく、ベトナム国民全員にとっての名誉であり誇りでもあります。

九鼎は、世廟の庭（フエの帝国城塞内）の前に置かれた９つの大きな青銅製の鼎で、ミンマン王の命令で１８３５年１２ 月に鋳造が開始されました。九鼎の鋳造は１年以上をかけて完成し、その後も完成度を高め続けました。特に、これら９ つの大きな青銅製の鼎の本体には自然、山と川、国境、名所、産物、武器、乗り物、生活など、ベトナムの典型的かつ特徴的な現象を生き生きと描かれた合計１６２の繊細な鋳物があります。

 多くの残忍な戦争を経て２００年近くが経った後も、九鼎は以前と変わらぬ姿を保っています。九鼎は設立以来、小さな細部に至るまで一度も修復されていません。したがって、それらは独自の価値を持ち、置き換えることはできません。 

九鼎は王を象徴し、グエン王朝の権力を示しているだけでなく、１６２の精巧なエンボス加工が施された青銅の鋳物からなる１９世紀初頭のベトナムの「百科事典」にも例えられています。鋳造された鋳物の内容は、数字の９に従って計算され、分類され、配置されています。例えば９つの宇宙の星と自然、９つの大きな山、９つの主要な河川です。 

 これら１６２の画像を通して、鋳物が国内各地の多くの有名な風景や名所の多様性を一般的かつ簡潔に表現し、その風景の豊かさと美しさを生き生きと描写していることがわかります。例えば、トゥエンディンにはホン川、フエンディンにはメコン川、ニャンディンにはフオン川があります。カオディンが森にトラを飼っているなら、ニャンディンは海にクジラがいます。 

特に、九鼎の鋳物像の中にはベトナムの多くの場所、山、川、海、島々を表現した像と、非常に正確かつ明確な漢字の注釈があり、グエン王朝のごく初期の領土主権を主張する意識を明確に示しています。

  一連の古代ハンノム文書とともに、九鼎に刻まれた海と島々の画像は、ホアンサ島とチュオンサ島の２つの群島におけるベトナムの主権に関する貴重な情報源であり、またグエン王朝の皇帝たちが早い時期から海と島々に対する国の主権を熱心に守り、統治しようと努めていたことを後世の人たちに知らしめています。 

資料的および百科事典的情報の傑出した価値に加えて、九鼎は１９世紀のベトナム人の青銅鋳造技術の傑作とも考えられています。九鼎の金型は独特で、模倣を避けるために、完全に鋳造された後、破壊されました。 

もう一つ興味深いのは、中国、日本、韓国などのこの地域の国々の封建王朝の歴史を見ると、これらの国の王宮には、グエン王朝時代の古都フエの王宮の九鼎に似た鋳物がないということです。ベトナムでさえ、以前の王朝はそのような文書を残していませんでした。 

このように、フエの九鼎はベトナム民族の高い文化的、歴史的価値を備えたユニークな芸術作品であり、その時代の思想的内容、国家、宇宙についての人々の思想、概念が含まれていることがわかります。九鼎は「ユニーク」であり、代替することはできません。これらの工芸品は２世紀近くにわたって存在し、非常に豊かで貴重な骨董品のコレクションとなっています。

これらの素晴らしい価値と意味により、九鼎は２０１２年に国宝として認められ、現在はユネスコのアジア太平洋地域記憶遺産として正式に認定されました。

• 文、撮影：タイン・ホア/ベトナムフォトジャーナルと資料