ファム・クアン・ヴィン大使:越米関係構築と促進に尽力した人物
プロフェッショナルな外交姿勢、鋭い戦略的思考、そして広範なネットワーク構築能力を備えた駐米ベトナム特命全権大使ファム・クアン・ヴィン氏は、ベトナムを代表する優れた外交官の一人として知られています。大使はベトナムと米国の二国間関係の推進において顕著な足跡を残し、重要な役割を果たしてきました。
ファム・クアン・ヴィン大使がベトナムの外交分野に献身的に尽力した40年近くの道のりは、経験の積み重ねと勇気の興味深い物語です。ヴィン大使はこの仕事に就く前、ベトナム常駐国連代表部で約27年間にわたり多国間外交に従事し、その後、外務次官、ASEAN高級実務者会合(SOM)ベトナム代表としてASEAN関連の業務に7年以上携わり、その後、駐米ベトナム大使として約4年間を過ごしました。それぞれの時期、分野での活動は忘れがたい思い出を残しただけでなく、国際的な視野、複雑な国際問題を解決する能力、そして地域協力を調整・推進する能力を身につけました。こうした貴重な経験と確固たる基礎こそが、勇気と決断力に溢れたヴィン大使を形作り、ベトナムと米国の二国間関係の促進に重要な貢献を果たしたのです。
ベトナムと米国の関係が正式に包括的パートナーシップに格上げされてから僅か1年後の2014年、首都ワシントンD.C.に着任したファム・クアン・ヴィン大使は多くの心配と懸念を抱いていました。大使はこれが解決すべき一連の問題を抱えた、極めて重要だが困難な時期であることを深く認識していました。包括的パートナーシップの枠組みを効果的に実施すること、あるいは文書上の約束を実質的な協力に具体化すること、そして両国が国交正常化20周年を迎える2025年に象徴的な協力の足跡を残すこと、さらに米国における政権交代の可能性と経済・貿易協力の推進という課題にどう取り組むかが、ヴィン大使が特に注意を払った課題でした。
困難をチャンスに変える
こうした懸念や葛藤は、ファム・クアン・ヴィン大使決してひるませることはなく、むしろ情熱、知識、経験、そして想像力のすべてを注ぎ込み、困難をチャンスに変える強い原動力となりました。ヴィン大使は、2015年7月に行われたグエン・フー・チョン書記長の歴史的な米国訪問を陰で支えた人物でした。ベトナム共産党書記長が米国を公式訪問したのはこれが初めてでした。
ヴィン大使は「グエン・フー・チョン書記長の訪問の実現は、両国が互いの政治体制を尊重していることを示す最も明確かつ最高の証です」と断言しました。特に、ヴィン大使の外交能力と柔軟性は、2016年5月にバラク・オバマ大統領がベトナムを訪問し、米国がベトナムに対する殺傷兵器の禁輸措置の全面的解除を発表、そして2017年11月にはドナルド・トランプ大統領の訪問と米国大統領2代続けてのベトナム訪問の推進に貢献したことで一層証明されました。
経済・貿易分野において、ヴィン大使が2014年に就任した当時、両国間の貿易額は360億米ドルを超えていました。2018年に退任するまでに、その数字は650億米ドルを超え、40%以上増加しました。これは、両国の協力の可能性を示すだけでなく、大使と駐米ベトナム大使館が両国間の経済貿易協力の促進、提言、支援、そして特にトランプ政権下で発生した貿易赤字問題などへの対応に尽力してきたことの明確な証でもあります。
政策面で相違や予測困難さが多いされるトランプ大統領政権下という時期においても、ヴィン大使は政治家、学者、企業関係者との幅広いネットワークの構築・維持に努め、民主党と共和党双方との関係を巧みに維持・発展させました。
ヴィン大使は華美な言葉や回りくどく冗長な会話を好まず、常に本質に切り込み、有益な情報の交換に重きを置いています。なぜなら、これこそがすべての接触、特に「ギブ・アンド・テイク」の外交の場において価値を生み出す核心要素だと考えているからです。ヴィン大使は常に相手の立場に立ち、必要とされる情報を把握し、自ら積極的に情報を共有したり、要望に応えたりすることで信頼を構築し、関係の強固な基盤を築きました。
多くの局面において、ヴィン大使は往来や訪問を促進し、情報の流れを滞りなく確保するめに、伝統的な外交ルールの「束縛」を何度も「破り」ました。緊急の場合は、「ぎりぎり」の時間や深夜過ぎであっても、携帯電話を使ってパートナーと連絡を取ることに躊躇しませんでした。さらに、非公式ながらも非常に効果的なコミュニケーションの手段も確立しました。パートナーを自宅(ベトナムハウス)に招き、「おしゃべり」をしながらベトナムの家庭料理を囲むという方法です。こうした会合は、個人的な絆を深めるだけでなく、米国の様々な省庁の職員と多面的な情報交換を行うことができる貴重な機会でもあり、公式な場では迅速に行えないことでした。
率直で情報通な姿勢と個人的な関係を築く能力こそが、ヴィン大使が米国駐在中に確固たる信頼を築き、外交活動を成功に導き、多くの重要な成果を残す鍵となったのです。彼が残した功績は、貿易額や歴史的な要人の訪問にとどまらず、相違点を共通点に、困難をチャンスへと変える術を持ち、ベトナムと米国の二国間関係に新たな時代の扉を開いたのです。
文:ダン・フエン
撮影:コン・ダット