チャン・ヒュー・ソン准教授・博士 ベトナムの村々の「騎士」
霧に包まれた北西部の山岳地帯の村々から国際文化フォーラムに至るまで、チャン・ヒュー・ソン准教授は、ベトナムの遺産を世界の言葉に「翻訳」することに生涯を捧げてきました。2025年にフランス政府からパルム・アカデミック(教育功労勲章)騎士章を授与されたチャン・ヒュー・ソン准教授は、単なる学者としてだけでなく、ベトナム文化を世界へとつなぐ揺るぎない架け橋としても高く評価されています。
北西部の「文化の森」から記憶のページへ
彼のキャリアの中で最も重要な業績の一つは、過去の痕跡を刻んだ「記憶の書」とも称されるサパ古代石刻群の保存活動です。2005年から2010年にかけて、ラオカイ省文化スポーツ観光局長として、チャン・ヒュー・ソン准教授はフランス極東学院(EFEO)の専門家とともにムオンホア渓谷にある200を超える古代石を調査しました。
ありきたりの保存方法を採用するのではなく、彼は柔軟なアプローチを選びました。それは、遺産の保護と地域社会の意識向上を組み合わせた方法でした。地域の再計画を推進し、負の影響を最小限に抑えると同時に、遺産を地元住民の誇りの源へと変えていきました。2010年に出版されたサパ古代石刻群のカタログは、その努力の結晶であり、一見沈黙しているかのような石の刻印を貴重な歴史的資料へと昇華させたのです。
保存活動にとどまらず、彼はサパにおけるコミュニティツーリズムの礎を早い時期から築きました。2001年、ベトナムではこのモデルがまだ馴染みのない時期に、ホー村のゼン集落で試験的に導入しました。チャン・ヒュー・ソン准教授は「コミュニティツーリズムは決して無計画に拡大すべきではない。なぜなら、そうすれば資源の『根源』を失ってしまうからだ。観光客が自然の美しさを見いだせなくなれば、彼らはもう来ることはないだろう」と考えています。その理念のもと、ホー村は模範的な観光地となり、住民は観光を営むだけでなく、自らの文化の物語を語り続けています。観光収入は保存活動に再投資され、地域社会が生活を向上させながら文化的アイデンティティを維持するのに役立っています。彼にとって、文化はそれを所有するコミュニティの生計と結びついてこそ存続できるのです。
国際舞台における「文化の騎士」
2025年、チャン・ヒュー・ソン准教授は、フランス政府から教育文化の分野における最高位の栄誉の一つであるパルム・アカデミック(教育功労勲章)騎士章を授与されました。これは、彼個人の名誉にとどまらず、ベトナムの科学と文化の国際的な貢献が広く認められたことを示すものです。
チャン・ヒュー・ソン准教授はキャリアを通じて、ユネスコやフォード財団といった国際機関との多くの共同プログラムに参加し、指導してきました。代表的なプロジェクトの一つは、ザオ族の書の保存であり、これは医学、天文学、慣習法に関する貴重な知識の宝庫です。
彼のアプローチの特徴は、単に遺物を収集することにとどまらず、デジタル化して知識を地域社会に還元することに重点をおいている点にあります。この考え方により、国際的なパートナーとの対等な協力関係を築き、ベトナム人研究者の地位を支援する役割から戦略的パートナーシップへと高めることに成功しまじた。
彼によれば、文化は特別な形の「ソフトパワー」です。それぞれの遺産、それぞれの無形の価値は、ベトナムが世界と交流するための「パスポート」となり得ます。しかし、彼は常に強調していました。「その魅力は、単に商業化された製品からではなく、真実性から生まれなければならない」。
勲章を受け取った彼は「この賞を村々に持ち帰りたい」とだけ述べました。それは、彼の研究の旅路を共に歩み、分かち合い、貢献してくれた民族コミュニティへの感謝の言葉だったのです。
70歳近くになった現在も、応用文化観光研所の所長として、クアンニン、タイグエン、ラオカイなど各地で保存プロジェクトに携わり続けています。彼は都市化とグローバル化の圧力に屈することなく、「文化の森」の灯を絶やさぬよう、情熱をもって守り続けているのです。














