岩石高原を彩るソバの花の季節

銀灰色のカルスト岩山が連なるドンヴァン岩石高原(トゥエンクアン省)の谷あいや山の斜面では、白や淡いピンク、そしてピンクがかった紫色のソバの花で彩られています。ソバの花の季節は、ベトナム最北端地域ならではの風景を生み出すだけでなく、この地に暮らす少数民族の人々の自然や文化、生活を探訪する旅へと誘います。

フォーカオ三叉路から岩石高原へと続く道の先には、幾重にも連なる山々や、山腹に寄り添うように建つ土壁の家々、そして何世代にもわたって築かれた手作りの石垣が広がります。灰色の石に覆われた風景の中に、ソバの花が点在し、険しい地形で知られるこの土地に優しい彩りをもたらします。

ソバの花は、毎年10月初旬から12月にかけて咲きます。咲き始めは白や淡いピンク色を帯びた小さな花びらが、満開になるにつれて濃いピンクや紫ががったピンクへと変化します。時期によって色合いが移り変わるため、岩石高原に広がる花畑はいつも異なる美しさを見せてくれます。鋭く切り立ったカルスト岩の大地を背景に、繊細な花々の絨毯が独特のコントラストを生み出し、柔らかさと景観の雄大さを際立たせています。

フォーカオ地区では、ソバの花が土壁の家々の間や道沿い、山の斜面に植えられています。黄土色の土壁の家、古い瓦屋根、整然と積み上げられた石垣が、モン族の伝統的な建築様式を色濃く残す空間を形づくっています。花が咲くと、ピンクがかった紫の色合いが土壁や灰色の岩の間で混ざり合い、集落の景観にいっそう鮮やかな彩りを添えます。2026年には、フォーバン村だけでも57ヘクタールのソバが栽培され、その一部は祭りや観光のためのエリアとなっています。

フォーカオを後にして、旅はフォーバンへと向かいます。ここには、土壁や木製の扉、そして静かな趣を醸し出す細い路地が残る古い家並みが今なお大切に保存されています。こうした古い町並みは、ソバの花の季節に独特の魅力を生み出します。外側の山の斜面からは広大な景色が広がる一方、小さな路地ではソバの花が地元の人々の素朴な暮らしに彩りを添えます。古い建築と季節の花が織りなす風景は、この岩石高原が単なる岩山や曲がりくねった山道だけではない、新たな魅力を訪れた人々に抱かせてくれます。

スンラー渓谷にあるルンカム文化観光村は、多くの観光客が訪れる人気スポットの一つです。ここは伝統的な土壁の家々、中でも映画「パオの物語」のロケ地として使用された家は特によく知られています。村の入口沿いや集落周辺に広がる花畑は、毎年晩秋から初冬にかけて特徴的な光景を作り出します。岩山に囲まれた谷あいでは、小さな耕昨地一面に花々が咲き、村の静けさを一層際立たせています。訪れた人々は花々との記念撮影を楽しむだけでなく、モン族の伝統家屋の建築様式や風習、日々の暮らしについても理解を深めることができます。

ソバは景観としての美しさだけでなく、高地に暮らす人々の生産活動とも深く結び付いています。ソバは収穫後の畑に種が蒔かれ、地元の貴重な食料源や地域の特産品として役立てられています。ソバの実は餅の原料や粉として料理に使われ、この植物から作られる様々な製品の中には、観光客に紹介される特産品もあります。そのため、ソバの開花期は単なる花を観賞する時期ではなく、農業生産や住民の生計、さらには地域社会における観光振興の変革とも結び付いています。

ラオサーでは、モン族の村でソバの花の美しさを楽しむことができ、ここには、古い家屋や伝統的な銀細工が注目すべき文化的特徴として今なお受け継がれています。道沿いや岩だらけの山腹に咲く花々は旅のハイライトとなっています。また、花を鑑賞するだけでなく、観光客は銀細工についても学ぶことができます。銀細工は、職人の細心の注意と長年の経験、そして熟練した手を必要とする工芸です。こうした体験は、ソバの花の観賞と、この地域に息づく文化的価値の探求とを結びつける貴重な機会となっています。

 

ルンタオを経てルンクー地区へと進むにつれ、岩石高原の景観はさらに大きく広がり、連なる山の斜面やカルスト岩の間に点在する集落が目に入ります。ソバの花畑は景観に優れた場所に配置され、ルンクー国旗塔やローローチャイ文化観光村といった観光スポットにつながっています。辺境地帯では、花の優しい色合いが家並みや道、そして小さな耕地に広がる緑をいっそう引き立てています。また、訪れた人々がロロ族の文化や暮らしに触れ、最北の村の独特な建築や生活習慣について理解を深める機会でもあります。

より長く花の季節を楽しめるよう、トゥエンクアン省は2026年にドンヴァン岩石高原地域の各村で約400ヘクタールのソバの花を栽培しています。花の開花時期を10月から12月末まで延ばすため、3期に分けて植え付けを実施し、各種祭りの開催時期に合わせています。花畑は観光ルート沿いや景観に優れた場所に配置されており、観光客が観光や体験活動を組み合わせるのに便利です。2026年に開催される第12回トゥエンクアン省ソバの花フェスティバルは「岩の大地の響き」をテーマに、この地域の自然や文化、そして人々の魅力を広く発信しています。

ソバの花の季節はやがて終わりを迎え、花は散って新たな種まきの時期へと移り変わっていきます。しかし、岩石高原の魅力は色鮮やかな花の絨毯だけではありません。そこには、岩山の間に静かにたたずむ集落の美しさ、伝統的な家屋や受け継がれてきた手工芸品、そして祖国最北端の地で力強く暮らす人々の日常があります。ソバの花の彩りが雄大な自然景観や地域固有の文化と融合するとき、ドンヴァン岩石高原への旅は、トゥエンクアン省のアイデンティティ豊かな土地をより深く探求する旅となります。

トゥエンクアン省ルンタム村に広がるソバの花畑。ソバの花の開花は、トゥエンクアン省における年末の観光シーズンを彩る人気イベントとなっている。今年は、2026年ソバの花フェスティバルの開催に合わせ、ドンヴァン岩石高原地域の各村で約400ヘクタールにわたってソバを植え付けた。同フェスティバルは10月25日に開幕し、12月まで開催される。
ソバの花は房状に咲く花で、花びらが集まって円錐形を成している。咲き始めは白または淡いピンク色を帯びているが、季節の終わりに近づき、冷たい空気に包まれると、花は紫がかったピンク色へと変化する。写真:トゥエンクアン省ルンタム村に広がるソバの花畑。
ソバの花はトゥエンクアンに美しさをもたらすだけでなく、食料としても利用され、餅や様々な郷土料理の材料にもなっている。写真:トゥエンクアン省イエンミン村に広がるソバの花畑。
トゥエンクアン省イエンミン集落に広がるソバの花畑。
トゥエンクアン省のもう一つの美しいソバの花の名所は、旧ドンヴァン県ルンタオ村(現在のルンクー集落)に広がる丘陵や山々である。この地域の花畑を一望するには、マーレー山に登る必要がある。ここでは例年11月中旬頃にソバの花が最も美しく咲き誇る。写真:トゥエンクアン省イエンミン村に広がるソバの花畑。
ソバの花は咲き始めには白色を帯び、次第に淡いピンク色を帯び、やがて濃い色へと変化している。最も美しい時期は実をつけ始める頃で、一面に広がる花畑には様々な色彩が混じりあい、その圧倒的な彩りに訪れる人は思わず息を飲むような高揚感を覚えるだろう。ソバの花の季節が訪れるたびに、訪れる人々は新たな感動がもたらされ、この地にまた違った空間や色彩を楽しむことができる。写真説明:トゥエンクアン省イエンミン集落に広がるソバの花畑。
トゥエンクアン省イエンミン集落に広がるソバの花畑。
イネ科に近い植物であるソバには様々な用途がある。その実は菓子や酒の原料となるほか、今日では主に家畜の肥料として利用されており、東洋医学では薬草としても用いられる。栽培期間が短く、植えてから短期間で収穫できるため、古い作物の収穫が終わってから次の作物の収穫が始まるまでの間、村の人々を飢えから救う食料となってきた。写真:トゥエンクアン省フォーバン村に広がるソバの花畑。
トゥエンクアン省ルンタオ村に広がるソバの花畑。
ソバの花が美しく咲き誇ることで知られている場所として、ホアンスフィ、シンマン、フォーバン、フォーカオ、スンラー、ドンヴァン、ルンクー、マレなどが挙げられる。「幸福の道」と呼ばれる国道4C号線沿いでは、谷間や丘陵の斜面、あるいは道端のいたるところに一面に広がるソバの花を堪能することができる。写真:トゥエンクアン省ルンタオ村に広がるソバの花畑。
ソバの花が咲き誇り、谷一面に広がっている。それは、岩山がそびえ立つ雄大な岩石高原に詩情溢れる彩りを添えている。
トゥエンクアン省ルンタオ村に広がるソバの花畑。
観光客に人気のソバの花観賞スポットとしては、国道4C号線沿いにあるタックソンタン、クアンバーのタムソンからヴァンチャイにかけてのエリア、さらにフォーカオ、ニャパオ、ルンタオ、サントロ(ルンクーへ向かう道路沿い)などが挙げられる。また、時間に余裕があり、岩石高原の集落を気ままに巡りたい人には、ラオサー、フォーバン、フォーラーを訪れるのもおすすめである。これらの地域では、自然に育つ広大なソバ畑を見ることができる。
一斉に種をまくのではなく、各地域では3回に分けて種まきを行い、10月から12月末まで長期間にわたってソバの花を楽しめるようにしている。花が最も美しく咲き誇る時期は11月上旬と見込まれており、ソバの花フェスティバルの開幕時期とも重なる。
トゥエンクアン省ルンクー村ロロチャイ集落のソバの花畑を歩く伝統衣装に身を包んだロロ族の女性たち。
トゥエンクアン省ルンクー村ロロチャイ集落のソバの花畑を歩く伝統衣装に身を包んだロロ族の女性たち。
トゥエンクアン省ルンクー村ロロチャイ集落のソバの花畑を歩く伝統衣装に身を包んだロロ族の女性たち。
鮮やかな紫がかったピンク色のソバの花々を背景にポーズを取る少女。
  • 文、撮影:カイン・ロン、コン・ダット/ベトナムフォトジャーナル

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