ベトナムとの友達

杉原厚吉教授がベトナムで「錯視」アートを披露

杉原厚吉教授は科学的思考と斬新的なアプローチを用いて、数学的な視覚研究を芸術作品へと昇華させ、ベトナムで開催された展覧会「錯視」に展示しました。この「錯視」の物語は、現代生活における数学と視覚芸術のユニークな体験をベトナムの人々に届ける、新しい風のような存在となりました。

杉原厚吉教授は科学的思考と斬新的なアプローチを用いて、数学的な視覚研究を芸術作品へと昇華させ、ベトナムで開催された展覧会「錯視」に展示しました。この「錯視」の物語は、現代生活における数学と視覚芸術のユニークな体験をベトナムの人々に届ける、新しい風のような存在となりました。

杉原厚吉教授(明治大学先端数理科学インスティチュート)は、国際「錯覚」コンテストで4度の優勝経験を持ち、日本を代表する応用数学および空間認識の専門家です。杉原教授は視覚的な視点、立体形状や錯視を通して数学の不思議さを発見し、日常生活に応用できる芸術性の高い作品をデザインすることで、ベトナムの若者や一般の人々を支援することに情熱を注いでいます。


杉原厚吉氏は明治大学先端数理科学研究所の特別教授で、数理工学が専門。



2025年6月から8月にかけて、杉原厚吉教授による芸術展「錯視」がベトナム日本文化交流センターで開催されました。この展覧会は、ベトナムの観客に新鮮な体験を提供するとともに、数学、芸術、科学を通じて日本とベトナムの文化交流の架け橋を広げることを目的としています。ベトナムの人々は初めて、驚きに満ちた視覚の世界を探求し、常識の限界に挑戦することができました。展示された53点の模型はすべて、杉原厚吉教授によってデザインされたもので、日本国内外で展示され、数々の受賞歴のある作品です。教授の発見は科学的な思考を刺激し、数学、芸術、そして人間の知覚の美しさと繋がりを明らかにします。そしてこの展覧会を通じて、ベトナムの人々が数理科学と芸術創造を愛するよう促すでしょう。


来場者の注目を集める杉原厚吉教授の展覧会「錯視」。



私たちは「錯視」展を訪れ、杉原厚吉教授によるワークショップ「真実を知っていても、立体錯覚の世界は必ず存在する」に参加しました。教授の親しみやすい話し方と数学における深い知識と才能は、私たちだけでなく多くの参加者に数学における錯覚の魔法を体験するインスピレーションを与えてくれました。

多くの若者たちは杉原厚吉教授の話に熱心に耳を傾け、好奇心と興奮をもって視覚的な物語の世界へと旅立ちました。立方体や鏡といった素材から始まり、錯視(ある物体が実際とは異なって見える現象)や三次元空間錯視(三次元空間にある物体が実際とは異なって見える現象)といった要素を巧みに利用し、杉原教授は人間の脳から生み出される非合理的な動きと人間の錯覚を実演しました。たとえば、棒を2つの窓に貫通させる技法や、反重力の両面屋根などの例を通じて、立方体が論理的に芸術作品へと昇華され、実用的な意味を持つことを示しました。「無限ループ階段-実際に歩ける」(2021年)は、2022年に佐賀県立美術館、2023年に宮城県立博物館で展示されました。また、「なんでも吸引四方向すべり台」は、2010年のアジア錯覚コンテストで最優秀賞を受賞しました。また、2018年5月には明治大学中野キャンパスで「反重力すべり台」の大型模型が展示されました。

 

多くの人々が参加した杉原厚吉教授による体験イベント。

「変身立体」(鏡に映すことで形が変わる立体)の応用から創作された作品「変身立体 - 四角と丸」は、2016年の錯覚コンテストで準優勝を獲得しました。この応用技術により、「気まぐれなハート」「草原と波」「ハロウィンの猫」「桜とアゲハチョウ」「魚のX線」など、面白いゲームを作るための興味深いオブジェクトを作成することができます。

杉原厚吉教授の作品には、以下のようなものがあります。

•「巣に帰る」(2022年)が第106回二科展彫刻部門で入選。

•「家族四人」(2019年)が2023年1月に新潟県南魚沼市の池田記念美術館に展示される。

•「振り向かない飛翔」が日本版画協会第14回デジタル模型コンクールで優秀賞を受賞。

 

杉原厚吉教授は明治大学先端数理科学インスティテュートの特別名誉教授で、数理工学が専門。ロボットの目を開発する研究過程において、錯視現象をリアルに再現する手法を発見し、錯視の分野へと研究を広げた。一見不条理に見える数多くのオブジェを制作し、現在はオプトアート(Opt Art)造形作家として活躍している。国際錯視コンテストで最優秀賞を4回、準優秀賞を2回受賞し、その錯視作品は世界各地の科学センターや美術館で展示されている。

アルゴリズムの応用により、ソフトボディは魔法のような動き(回転する形状が連続的に変化)を見せます。教授が作成した平行移動立体(投影)は子どもたちに大人気の作品です。例えば、「右側が好きな小鳥」「一周するトカゲ」「くねくね泳ぐ魚」などがあります。 


 

日本の文部科学省は、実用性の高い研究成果により、杉原厚吉教授の錯視効果に関する研究プロジェクトに助成金を交付しました。これは、杉原教授が「錯視」研究の分野に才能を注ぎ続けるための貴重な励みとなっています。

ワークショップに加えて、「錯視」展示スペースは、ベトナムの人々が芸術作品を生み出す数学的な立体や錯視について知識を深めるのに科学的な物語でもあります。特に、錯覚研究への応用はベトナムの日常生活においても役に立ちます。例えば、運転時に道路上で「幽霊坂」(錯覚により緩やかな坂が突然急な坂に見える)が現れることがあります。視覚に関する知識を理解し、身に付けることで、錯覚による危険を回避し、ドライバーは安全な生活環境を確保することができます。また、写真撮影では、錯覚は同じカメラ位置からレンズを変えて撮影した写真を比較するのに役立ち、広角レンズで撮影した画像から奥行きを認識することができます。スポーツでは、サッカー場の看板やスキー、観光などの分野でも、錯覚は視野の認識に応用されています。


 

杉原厚吉教授の錯視展を訪れた来場者たち。



 

ヴィンスクール ハノイ7年生のホアン・ハイ・フォンさんは、「杉原厚吉教授の研究成果について直接お話を伺うことができ、錯覚に関する貴重な知識をたくさん学び、数学が日常生活においていかに素晴らしいものかを実感しました」と語りました。

杉原厚吉教授は数学的視覚を現代生活に応用する研究における才能と情熱を持ち、自身がデザインした作品を日本国内および海外の大学での教育に取り入れています。


 

文:ヴァン・チャン
撮影:タイン・ザン/ベトナムフォトジャーナル




top