北京に拠点を持つ日系メーカーの幹部は、「中国政府が貿易相手の多角化を進めているため、中国の対米依存度はさらに低下していくだろう」との見方を示しています。
中国税関が発表した4月の貿易統計によりますと、中国から東南アジア諸国連合(ASEAN)向けの輸出は、前年同月比で20.8%の増加となり、前月の11.6%から大きく伸びが加速しました。アメリカのトランプ政権による対中関税引き上げの影響で、ASEANを経由する「迂回貿易」が増えている可能性があります。
野村ホールディングスは4月下旬のリポートで、「2024年の中国の輸出に占めるアメリカの割合は迂回分を含めると2割を超える」と指摘しました。直接の輸出では14.7%にとどまっていますが、ASEANやメキシコを経由することで、輸出総額が上積みされているという見方です。
トランプ政権は4月、対中国向けの追加関税を100%以上に大幅に引き上げましたが、その他の国・地域については、原則として10%の引き上げにとどめています。このため、中国の輸出先では、インドネシアが36.8%、タイが27.9%、ベトナムが22.5%と、ASEAN主要国への輸出が目立って増加しました。ロイター通信によりますと、同月のベトナムからアメリカへの輸出は、コロナ禍以降で最も高い水準となったということです。
「世界のスーパー」とも呼ばれる浙江省義烏市に拠点を置く輸出業者の男性は、「少しコストは増えるが、対米輸出を続けるつもりだ」と話していました。アメリカ政府は、メキシコなどに対しても中国製品の流入を抑えるよう求める姿勢を見せていますが、この業者は「それでも安く輸出するやり方はある」と述べています。
一方で、義烏では「アメリカは輸出先としてもはや魅力的ではない」といった声も出ていて、中国の輸出先は多様化の傾向を見せています。4月の統計では、アフリカ向けが25.3%、インド向けが21.7%と、それぞれ大きく増加しました。
北京に拠点を持つ日系メーカーの幹部は、「中国政府が貿易相手の多角化を進めているため、中国の対米依存度はさらに低下していくだろう」との見方を示しています。(時事通信)
(VOVWORLD)