 ノンヌオック寺に参拝する尼僧の学生
ベトナムでの仏教学院の建設と発展は、単なる全国での僧侶の学びへの需要を満たすためだけでなく、ベトナム仏教協会が新時代を担う道徳と才能ある人材を選択し、育成するためなのである。
北部の「仏事担当者選考学院」から
ハノイ仏教学院は「仏事担当者選考学院」とも呼ばれるが、この学院が「将来の仏事の担当する僧侶を選択し、育成する学校」という意味を持つからである。ハノイ仏教学院はソックソン山(ハノイ市、ソックソン郡フーリン村)の松林の中に位置しており、都会の喧騒から離れた空気の美味しいこの地は、僧侶たちの修行、鍛錬に相応しい場所と言えよう。
学院運営委員会の秘書を兼ねるティック・ミン・ティエン(Thich Minh
Tien)僧は、「当学院は僧侶向けの学校ですので、教育は単なる知識を与えるだけでなく、僧侶の人格も重視しています。それゆえ、ハノイ仏教学院での育成は厳しく、かつ寛容さも必要です」と語る。
 古文の講義。担当講師はハン・ノム学院のグエン・タ・ニー教授
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 ベトナム仏教学院において開催されたVesak
(2008年国際仏陀誕生祭)に出席するグエン・ミン・チエット(Nguyen MInh Triet)主席
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 レジャー活動:綱引き
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 レジャー活動:書道
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 レジャー活動:野菜作り
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 レジャー活動:ギター
| ここでの生活と修行は、すべて仏教の規律に基づくもの。僧侶たちのコミュニケーション、生活、学びから修行まで、同学院の教務課はつねに関心を払い、激励する。一年中、雨の日も晴れの日も、学生たちは午前4時に起床し、念仏を唄え、3食を精進料理という生活を送っている。午後、講義を受講し、学習を終えてから、再び寺へと参り、それから夜は寄宿舎で学んだことを復習するという日々。さらに、僧侶たちは仏教の規則250条、また、尼僧は自らの心と行いを正すための348条を学ばなければならない。たとえ規律が厳しくても、学生達たちが自覚して守らなければ、意味は成さないであろう。
「仏事担当者選考学校」での学習は、通常の学生と比べて、科目が10倍ぐらい用意されている。一学期で通常の場合、6~9科目を履修するが、ここの学生たちは17~19科目を履修しなければならないのである。仏教の教理に関する各科目以外、彼(彼女)らは経済学、社会学、哲学、外国語・コンピュータなど、通常の同様の科目を勉強しなければならないので、さらに大変なのである。
もちろん、この仏教学院の学生達は、最新のノートパソコン、やCDプレーヤーなどを所有しており、学習、研究の成果もより上がるようになっている。また、定められた講義以外、書道、文芸、武術などのクラブにも参加でき、精神的にも健康的にもメリットが大きい。このことからもハノイ仏教学院は、将来の社会の発展と仏教界を担う道徳・才能のある人材を育成する「仏事担当者選考学校」に足る学校であると言えよう。
南部の仏教学院まで
ホーチミン市仏教学院もまた、国家の大きな仏教研究、訓練センターの役割を担っている。ホーチミン市仏教学院の学院長であるティック・ミン・チャウ(Thich Minh
Chau)僧は、「当学院の仏教学士訓練カリキュラムは単なる修行ではなく、仏教についての知識と国家の文化、また関連科目を中心とした大学での教育基準に基づいています」と述べている。この教育目標をもって、ホーチミン市仏教学院は、国内外での著名な学院を卒業した高い専門知識を有する講師を多く抱え、現在、講師60名中、博士号取得者50名、修士号取得者10名および国内外の学院からの客員准教授を擁している。
学院の成績・成果については、同学院訓練部の部長は、「1985年から当学院は仏教学士を5期育成し、すでに卒業者が1000人以上になっています。現在、育成中の6期生と7期生の人数は急増しており、第1期生が60人しかいなかったのにかかわらず、第7期生は1017人に増加しています。特に、学院が発行した仏学学士認定書は世界での国々で認められており、当学院の卒業生数百人は、デリー国家大学、インド・プネ大学、台湾国家大学、中国の北京大学や上海大学、日本の東京大学、米国のバークレー大学などでの修士課程および博士課程において継続して研究することができるのです。将来、ホーチミン市仏教学院は、国内で仏教学修士と博士課程を開講する計画もあります」と、自信に満ちた口調で語ってくれた。
「ベトナム仏教の研究事業は、ベトナム文化の研究事業と切り離すことができない」と言う基本理念を掲げ、同学院はさらに全国の仏教学教育システムにおいて先進的かつ重要な役割を果たすようになった。ここでのカリキュラムは現実に即したべトナム仏教の発展に貢献するため、伝統的な価値と現代的の理念を融合させたものなのである。
 ベトナム初の女性仏教博士である ティック・グエン・フオン(Thich Nguyen
Huong)博士 (ホーチミン市仏教学院講堂)
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 ホーチミン市仏教学院の図書館で研究する学生
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 ホーチミン市仏教学院での講義風景。
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 ホーチミン市のベトナム仏教学院
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そして、九龍(クーロン)地域の仏教学院
ナム・トンクメール派仏教学院は、ベトナムの3つの仏教学院で最も新しい学院である。この学院は九龍(クーロン=メコンデルタ地方)地域でのクメール仏教徒のための高級仏教学校であり、ベトナム政府とベトナム仏教協会からの認可を受け、2年前(2006年2月6日)に設立されたばかりである。ナム・トンクメール派仏教学院の一時的な拠点はカントー市オモン地区にあるポーティソムロン寺であり、正式に学士課程の第1期生の募集を始め、すでに70人が入学した。
 余暇を過ごす学生
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 ナム・トンクメール派仏教学院の学士 課程の第1期生
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 ナム・トンクメール派仏教学院の拠点、ポーティソムロン寺を訪問する観光客
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 ナム・トンクメール 派仏教学院での英語授業
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このナム・トンクメール派は異なる修行作法があり、そして独自な言語で記された経書を所有している。それはパリという言語である。それゆえ、ナム・トンクメール派の僧侶と尼僧の修行・学習もまた、バックトン派とかなり異なるのである。特に、経書を
通訳・翻訳したり、唱えたりするために、パリの文字を勉強学習しなければならない。
ナム・トンクメール派仏教学院が誕生する前、ナム・トンクメール派の僧侶は仏教協会が開催するヴィニとパリについての初級・中級コースに参加していた。また、彼(彼女)らは英語やITなどの外部科目も履修した。数千人の僧侶たちはこのようなクラスでパリ語とナムトン派についての基礎的な知識を得た。さらに、ナム・トンクメール派の寺ではつねに8歳~15歳の子どもたち向けのクメール語コースも開講している。このようなクラスでの学習以外、クメールの人々は自分の息子を寺に数年間送るという習慣がある。しかしながら、このような既存のクラスでは、特に進学を希望する僧侶の将来的なニーズを満たすことは難しい。それゆえ、ナム・トンクメール派仏教学院の設立は、ナム・トンクメール派を含むベトナム仏教協会の戦略的発展の第一歩であり、九龍(メコンデルタ)地方での数多くのクメール仏教徒をはじめ、広域のナムトン派の仏教徒のニーズに応えるものであると言える。
同学院は設立されたばかりであるが、すでにインフラ設備およびカリキュラム内容は整備されている。現在、当学院には学士号、修士号、博士号を取得した講師が7名、ホーチミン市仏教学院の客員准教授が2名ほどいる。3年後、当学院は本格的に新しい拠点で運営する予定となっており、新たな場所はカントー市オモン地区にあり、総面積11.3haとなっている。近い将来で、ナム・トンクメール派仏教学院は、国家の大きな仏教学育成の拠点の一つとなり、新時代のベトナム仏教協会の僧侶育成事業の発展に大きな貢献を果たすことが期待されている。
ハノイ仏教学院の概要
ハノイ仏教学院はベトナム初の仏教協会の学院であり、ベトナム最大の僧侶育成拠点。将来、当学院も他国同様、仏教学修士および博士課程を導入する予定である。この25年間、クアンスー寺(当学院の初めての拠点)において、4期計600人の学士を育成した。2006年、ベトナム政府および国内外の多くの仏教徒からの支援によって、ハノイ市ソックソン県フーリン村に位置する新しい拠点で、第5期(2006-2010)の開講式を行った。新しい拠点総面積は10ha以上。新学期の学生数は34地方から計300人にも上る。 |
ホーチミン市仏教学院訓練部のティック・タム・ドゥック僧
当学院の訓練カリキュラムの主な内容は、パリと東南アジア、ハンタンとインド仏教、チベット仏教、中国・日本・韓国の仏教、ベトナム仏教などに関する様々な専門科目があり、その他、仏教の歴史なども導入する。これらは将来、当学院の国内での仏教修士と博士課程で導入される専門科目および基本科目となる。 |
ベトナム仏教協会の人材育成事業での成果、実績
ベトナムにおける仏教学院は、ハノイ、フエ、ホーチミン市、カントーの4大都市にあり、その中、カントー市にある学院がナム・トンクメール派の僧侶向けの学院である。その他、ベトナム全国で仏教高等学校が8コース、仏教中級学校が28校ある。現在まで、全国での仏教学士課程の修了者は2000人弱、仏教高等学校の卒業者は859人、中級学校の卒業者は3339人である。特に、海外で仏教博士号を習得した僧侶と他の専門課程を終了修了した僧侶は178人、その中の50人は当協会で重要な役割を果たしている。 |
nbsp;文:ティン・ハット(Thinh Phat)、タイン・ホア(Thanh
Hoa) 写真:ミン・クオック(Minh Quoc)、チョン・チン(Trong
Chinh) |