センターは、R&E研究と教育の両輪で体制を整え、政策づくりに役立つ迅速なデータ取得を実現します。
18日、ハノイ近郊のVNUベトナム国家大学ホアラック・キャンパスで「分析R&Eセンター」が開所しました。これは、SATREPS地球規模課題対応国際科学技術協力プログラムのプロジェクト拠点で、食と環境の安全に向けて、現場で迅速に測定できる小型分析デバイスの開発と人材育成を進めます。式典ではテープカットや機器デモが行われ、大学・行政・企業が連携して社会実装を加速させる方針が示されました。
代表者らによるテープカット(写真提供:JICAベトナム事務所)
センターは、マイクロ流体(微小な溝でわずかな液体を流して分析する技術)と電気化学検出(物質の濃度を電気信号として測る方法)を用い、水質の鉛・カドミウム・ヒ素・水銀や、大気のPM2.5/PM10(直径2.5μm/10μm以下の粒子)、NOx(窒素酸化物)を可視化します。さらに、地方のモニタリング拠点の整備、行政向け研修、分析資格制度づくり、IoT(センサーをネットにつないでデータを集める仕組み)とデータサイエンスによるリアルタイム解析にも取り組みます。
日本側は早稲田大学と東京大学が中核となり、堀場製作所、東亜ディーケーケー、JAIMA日本分析機器工業会の会員企業が参画します。センター内では、大学院生や分析官を対象に、機器実習と講義を組み合わせた研修を実施します。プロジェクト期間は2023年10月~2028年10月の5年間です。
在ベトナム・日本大使館の伊藤直樹大使は祝辞で、SATREPSの意義を挙げたうえで「水や大気の汚染調査には、現場でデータを収集・スクリーニングできる装置と、それを使いこなす人材が不可欠」と強調しました。今後5年間で約300人の高度研究人材の育成を見込むとし、地方拠点の整備や河川の重金属検知デバイスの開発が動き出していることにも触れ、全国展開への期待を述べました。
在ベトナム・日本大使館の伊藤直樹大使(写真提供:JICAベトナム事務所)
センターは、R&E研究と教育の両輪で体制を整え、政策づくりに役立つ迅速なデータ取得を実現します。JICA国際協力機構と日越の大学・企業・行政は、現場型の分析システムを確立し、環境汚染の早期発見と対策につなげていく考えです。
(VOVWORLD)